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ハレンチ女の茶碗蒸し。

現地の方々と触れ合うシーンは、ホーチミンより更に南にあるカントーで

行なわれる予定であった。

そう、ベトナムの一般家庭にお邪魔し、家庭料理を頂いたお礼に日本のお食

事をおご馳走しよう!というあのシーンである。

お料理得意なんです♪と自画自賛していた私は

Nディレクターに『raira6987ってお料理出来るの?大丈夫なの?』

と執拗に心配されたが

私がバリバリの飯炊き娘である事を熱く語ると

うん、うん頷き私の腕前を十二分に信じきってくれた。

そう・・・あの瞬間まで。


私は筑前煮・茶碗蒸し・きんぴら等を作る事になり俄然張り切っていた。

正直、茶碗蒸しは作った事はない。

そして、出発前にも練習さえしなかった!
(↑威張る事ではないが・・ここはキッパリ断言しておかないとね)

そうさ、私は大馬鹿野郎だ!!!!!



レシピを頭に詰めておけば何とかなる!とお気楽な私は

のんびり構えていた・・・。

本当バカ)

嗚呼、この時少しでも練習しておけば・・。



軽い打合せが済んだ私達は、材料を買いに、皆で市場へ行く事になった。

市場は、野菜・お魚・お肉・お豆・海産物・ときちんとコーナー分けされて
いるので、買い物がしやすい。

が・・・

時間が遅すぎた為か?

スーパーで見るパックに入った鶏肉は完売御礼状態。

私達の目の前にいる鶏さんは

とても骨々しくお毛ヶも生え放題のあの状態。

目が沁みる・・・。

細切れにされた鶏肉は、

早い時間になくなるから、今の時間はこれしかないよ!と

市場のおばしゃんに差し出された鶏肉は

『THE 鶏サマ』である。

とてもじゃないけど、このままでは恐くて包丁さえ、握れんぞ。

時間も一刻一刻と押し迫っている。

いかん。早く買い物を済ませねば。


市場のおばさんに、毛のボーボー生えた鶏肉を細かく切ってもらう用に

お願いし、急いで玉子焼き用の卵を買いに行く事にする私。



『おばしゃん、おばしゃん、卵ちょうだい。』
オバシャン
『あいよ、いまならダチョウの卵が安いよ!』

『ん?オバシャン、鶏の卵を下さいな。』
オバシャン
『あいにく、鶏はないね~他をあたんな。』

夕方の市場は閉まるのが早い。夕方4時も過ぎれば、皆店じまい。

さっさと帰宅してしまう。

お店がどんどん閉まっていく中、どの店へ行っても卵は売り切れである。

あってもダチョウさんの卵。

玉子焼きにダチョウの卵って合うのか?

食べた事がないから分からんよ・・・

店から店へ渡り歩いても、鶏の卵は無かった・・・

しょうがない、ここはもうダチョウ様のお力を借りる他なかろう・・。



市場から戻った私達は早速、調理へと取り掛かる事にする。

案内されたお台所は、4畳ほどのスペースであっただろうか?

シンク周りもしっかりしており、ガス台も2口コンロ。

とってもお料理はしやすそうな作りであるが

包丁を握るとなると、シンク横にスペースが無い為

床上にまな板を置き立膝を付きながら包丁を握るといった具合である。


ふむ。

まずは鳥肉の下ごしらえから・・と袋から

『鶏さん』取り出してびっくり仰天!!

鶏サマ切れてない・・・・・。


ぶつ切り?よりヒドイこの井出達。

まるで、ギャートルズの主人公が握り締めているお肉に骨がぼろんっと

垂れているといった感じである。


あまりに見る無残な骨々しい鶏サマを一番に切るのは大変であろう。

まずはウォーミングアップを兼ねて野菜から。

おおっつ、久々に料理したけどリズムは悪くない。

むしろ快調だ。

ルルル~♪

気分は最高!ノリノリの私だが

20名分のお食事を準備するとあって

カメラの前ブリッコをしてる余裕は、もはや無い。

プレッシャーを抱えた私に、北斗の拳のケンシロウが手助けをしてくれる。

ちょちょちょっちょCHOP!!!!!!!!!!!!!!

蓮根をスコスコ切る私は、快調!快調!快調そのものである。

残すところはこのチキン。

ふむぅ、どうしてくれよう・・。

このお宅にある包丁と言えば『中華包丁』のみ。

しかも、銀色の刃金を誇張するかの如く!ギラギラと光っておる。

曲者め!

察するに、

このギラ光は、切れ味最高!を意味しておる。

したらば、この光に肖り私の気持ちも託そうぞ!

名付けて?

TVを観ているあの人へ!?料理上手の私をアピールしてしまおう作戦第一弾!

『お嫁に伺います』の意味を込め、目はハートに。

そして慎重且つ、ズブリと鳥さんへ体重をかけた。

むむ。

手ごわい感触。

このお肉、体重を乗せても一向に切れる様子が無い。

こんな、大きな中華包丁なのに?

イヤ包丁のせいでは無く、私の腕のせいか?

包丁を持つ右手も非常に怪しい・・・。

プルプル震えておる。

もしや?この一年料理を全くしなかった為、腕が落ちたのか?

何度も何度も体重をかけ、『エイヤ!』と踏ん張るが

鶏肉は私の願いを素直に聞き入れてはくれない。

時間もおしている。

見かねたカメラマンI氏が、代わりに鶏肉をさばく事に・・・

すると、どうだろう!    

彼が包丁をふりおろす度、強情だった鶏肉はトントン切れていく。

恥ずかしながら、もはや、私の出る幕はない。

フォーム(包丁を持つ画)は撮影して頂いたので

ここは上手い事、編集して頂けるのかな?と企む私はまさに腹黒。

最低ハレンチ女だがここはI氏に甘えよう。

彼から出るリズミカルな音と彼の長くてきれいな指の舞は

ごつごつと骨ばった男らしい手にまるで、旋律を与えているかのようだ。

すごいな!お見事!と眺めていたまさにその瞬間、白タイルの台所が

真っ赤な絵を描いていくのをはっきりと見てしまった・・・。


そう、彼が指をズブリと切ってしまったのだ。

しかもギラギラした中華包丁で・・・

一瞬の出来事に、ネギを握り締め呆然と立ち尽す私をよそに


ベトナムのお母さんは
『あ!お兄ちゃん指切ったね。

 親指取れた?
 お兄ちゃん、ヤクザの親分になったね~。キャハハ!(笑)』

と楽しそうに笑っている。

お母さんはユーモアがありすぎだ。



血の量が半端ない・・・

止血せねば!とI氏の指を、持っていたネギで縛ろうとすると

ベトナムのお母さん
『お姉ちゃん、そんなんで止めたってあかんよ。

 ちょっと、まっとき~!』

と言い、その辺に無造作に置かれた液体をおもむろにドバっかけ出した。

傷口が染みるのか、うっつ!と声を押し殺しているI氏。

ひどく痛そうな表情をしているので、見ていて辛い。

ベトナムのお母さん
『これで、大丈夫ね、お兄チャン!

 指切れてたら今日から親分だったのに残念だったね~♪

 キャハハ(笑)

 でもお兄チャン、大丈夫!

 今ガソリンかけたからコレで血止まるね。

 だから、お兄チャンは子分♪

 親分さんにはなれないね~♪キャハハ♪』

正直、笑える状態ではなかったと思うが

お母さんは努めて明るかった。

 I氏
 『・・・お母さん、しみるんすけど。』

ベトナムのお母さん
 『もう、お兄ちゃん、しょうがないねぇ。

 だから親分になれなかったあるよ。

  そしたら、ちょっと待って。』

と言い残し、居間へ何かを取りに行ったお母さんの手には何やら葉っぱ。

お母さん
 『お兄ちゃん!

 これで大丈夫よ。これで痛くない。傷治るあるよ。

 血も止まるあるよ!』

と言いI氏の指をタバコの葉でじゃりじゃりもむお母さん。

I氏の悲痛な声が響き、このお宅のお父さんがすっ飛んできた。

『どれどれ見せてごらんなさい。

 ホっつ!!!(驚)

 こりゃ、いかん!

 ぱっくり切れ取るじゃないかね!!

 こりゃ今すぐ救急車ば呼ばなこて』

お父さんとお母さんの対応の違いに驚きつつも

お父さんの車ですぐに病院へ行ったI氏は、

右手の親指・人差し指共に5針も縫う大怪我をした。



元はと言えば私のせいである・・・

申し訳ない気持ちでいっぱいになり

せめてお料理だけは!とその後もケンシロウさまのお力添えを

頂くが、私に必要だったのケンタロウだった。

大鍋で作った茶碗蒸しは『とろとろ卵の具沢山スープ』と化していた。

鍋を開けると頼りない卵さんがフワフワ~っと浮いている・・・。

あれ本来は、たっぶりゆらゆらっとしているはず!?

肝心のチラシ寿司も、大馬鹿アホタロウの私が

茶碗蒸しに♪と海老をふんだんに要れてしまたった為

材料不足で作れず・・・

蓮根も張り切ってキンピラを作ってしまったお陰で

皮しか残っとらんのだ。

嗚呼、私の馬鹿野郎!!!!!!!



こうして、

私の初仕事は散々な結果に終った挙句、人様にケガまで負わせてしまったの

である。

しかし、TVではそんな様子は写っておらず、まるで

お料理上手の生娘である・・・・

嗚呼、私は本当!最低最悪腹黒うすら馬鹿のハレンチお下劣女だ。

しかし、そんな私の作った

お料理を美味しいよ♪と食べてくださった皆様に、ただただ感謝である。


合掌。



今、私はリベンジしている。


自分の中にある『そのうち』精神と。

そのうち
料理が上手になる~

そのうち
勉強する~

そのうち
○○○○する~

『そのうち』精神の私とは、もうおさらばだ!!もう甘えんぞ!!!!!!

注意>心の中で叫んでます。

何事も楽しく一生懸命取り組もう。

サラバ『そのうち!』


そうして、私は茶碗蒸しがようやく作れるようになった・・・。






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